SPACとは何か?
アメリカでSPACによるIPOが増加しています。アメリカでは、昨年一年間で200社以上のSPACが設立され、640億ドル(約6兆7200億円)もの巨額の資金調達が行われました。
ところで、SPACとは何でしょうか。SPACとはSpecial Purpose Acquisition Companyの略で、日本語では「特別買収目的会社」と訳されています。SPAC自体は何の事業も行ってなく、IPOにより資金調達を行い、調達した資金で他社を買収して事業会社になります。なおSPACは、設立から大体2年以内に他社を買収するのが一般的のようです。
アメリカでは、これまでに宇宙旅行会社のヴァージン・ギャラクティック、電気自動車メーカーのニコラ・モーターズといった有名企業がSPACによってIPOを果たしています。また、今年はビル・ゲイツが投資しているバタフライ・ネットワーク、DNA検査スタートアップの23andMe、ネットメディア企業のバズフィード、同じくネットメディア企業のバッスル・メディア・グループなどがSPACによるIPOを計画していると言われています。
SPACのIPOのプロセス
では、SPACのIPOのプロセスはどうなっているのでしょうか。まず、スポンサーと呼ばれる投資家が出資してSPACを設立します。スポンサーは通常、投資会社などの機関投資家がなるケースが多いようです。そして、SPACはSEC(米証券取引委員会)に上場を申請し、IPOして市場から資金を調達します。SPACによる資金調達は、通常は1株あたり10ドル程度で行われ、SPACは資金を調達すると資金をそのまま銀行の信託口座へ入金して保管します。
調達した資金をもとに「買収対象企業」を探索し、見つかったら買収をオファーします。条件が合えば合意となり、実際に買収が実行されます。買収される企業は未上場の、それなりの規模と事業内容を持った企業が多いようですが、中には少々得体の知れない企業もあるようです。
買収が実行されるとSPACの株主は株を合併後の新会社の株と交換し、新会社の株主になります。また、新会社の社名は通常、買収された会社の社名にするケースが多いです。これにより、買収された会社は自ら市場にIPOをしたのと同じ結果が得られます。
なぜSPACなのか?
ところで、なぜSPACが使われるのでしょうか。その最大の理由はIPOにかかる事務手続きとコスト、そして時間が節約できるからです。特に買収される会社が普通にIPOする場合、SECに上場申請を行い、各種の資料などを整え、投資家への説明会を開催するなど、非常に膨大な作業を行う必要が生じます。また、そのための人的コストや時間も馬鹿になりません。SPACを使うことで、そうしたことを大幅に削減できるのです。
一方でSPACにはマイナス面もあります。通常のIPOに比べ、SPACによるIPOでは買収企業のデューデリジェンスなどの透明性確保が難しいとされています。また、IPOによるキャピタルゲインも、通常のIPOよりも低いというデータもあります。
ところで、日本においてはこうしたSPACによるIPOは認められていません。仮に認められたとすれば、事業再生や事業転換を大きくバックアップできる可能性が生じるでしょう。金融の多様性を広げるという意味でも、導入が議論されてもいいと思います。