シードベンチャーに投資しない日本のVC
15年くらい前に「日本のベンチャーキャピタルはシードベンチャーには絶対投資しない」というコラムを旧ホームページに掲載したことがあります。多分、今も状況はそれほど変わっていないと思いますが、その通り、日本のベンチャーキャピタル、特に大手のベンチャーキャピタルは、シードベンチャーには絶対に投資しません。
日本のベンチャーキャピタルは、よくアメリカのベンチャーキャピタルと比較されますが、それぞれのプレーヤーがまったく違います。いずれもファンドを組成してベンチャー企業に投資する点は同じですが、アメリカの場合、ジェネラル・パートナーが投資先を発掘してファンド運用の責任を負い、リミテッド・パートナーと呼ばれる投資家がお金を出資します。ジェネラル・パートナーの多くは起業家出身で、少なくない数の人がIPOやM&Aで大金を手にし、自らも投資しています。そして、リミテッド・パートナーの多くがジェネラル・パートナーの知人や友人で、いうなれば全員「知った間柄」の仲間たちなのです。
アンドリーセン・ホロウィッツというVC
現在のアメリカを代表するベンチャーキャピタルにアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)がありますが、このベンチャーキャピタルは、世界初のブラウザ「モザイク」とこれも世界初の商用ブラウザ「ネットスケープナビゲーター」を開発したマーク・アンドリーセンと、著名起業家で投資家のベン・ホロウィッツが2009年に共同で立ち上げたベンチャーキャピタルです。創業前の2006年からすでに、二人は8000万ドル(84億円)もの自分のプライベートのお金を45社のスタートアップ企業につぎこみ、エンジェル投資家として活躍していました。なお、その45社の中にはTwitter社も含まれています。
20009年に会社を設立し、初めてファンドを組成した時、知人や友人が「私もぜひ仲間に入れてくれ」という感じで3億ドル(約315億円)ものお金が集まったそうです。出資を希望する人が続出し、翌年には6億5000万ドル(約682億5000万円)規模の第2号ファンドを組成せざるを得なくなりました。それほど多くの人が出資を希望したのです。
二つのファンドを組成した二人は早速投資を開始、2009年にSkypeを買収、2011年にマイクロソフトへ85億ドル(約8925億円)で売却して巨額の利益を得ています。2011年にはFacebook、グルーポン、フォースクエアなどのハイテク企業に投資しています。その後BuzzFeed、ロブロックスなどにも投資し、今日までに時価総額を166億ドル(約1兆7430億円)にまで膨らませています。